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赤ずきんは動かなくなった。
アリスはそっと赤ずきんから離れ、俺の前まで来る。
俺は自然とアリスに質問をしていた。
「アリス、どうしてお前は登場人物達を騙して力を与えて、人間を襲わせるんだ……」
俺はアリスをじっと見つめた。
思った以上に冷静な自分に驚いた。
「物語が終わっちゃうのは……寂しいから……」
俯いて、悲しそうに言うアリス。
「どういう意味だ?」
物語っていうのは童話のことか?
「終わった物語は、いつの間にか忘れられていってしまう……そんなの寂し過ぎるから……」
顔を上げずに言う。
答えになってないだろ。
「それと人間を襲わせるのとどう関係があるんだよ」
アリスは顔を上げ、俺のほうを真っ直ぐ向き、答えた。
「ウサギを放せば……それを追う人がいる……物語が続いていく」
えっ……
「終わった物語にも、続きが出来る……」
俺は頭で必死に言葉を繋げていく。
「終わった物語をウサギにして、それを追わせて続きを作ろうとしたのか……」
「……」
沈黙は肯定と取っても良いよな。
アリスは何も言わずに後ろを向き、歩き出した。
「ちょっと待ってくれ!!」
俺は立ち去ろうとするアリスを引き止めた。
「もう一つだけ教えてくれ……どうしてお前は、俺に力を与えたんだ?」
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