フェアリーテイル

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フェアリーテイル

「音木道和」 月明かりも少ない、家へ帰る途中の暗い道で、俺を呼ぶ声がした。 振り返ると、暗い道の真ん中に見知らぬ少女が立っている。 目がキリッとした丹精な顔立ちの少女。 なんでこんな子が夜遅くに…… 堂々と立つ少女を、多少不信に 思いながらも見つめる。 「童話の声が聞こえるっていうのはあなたね。死にたくなかったら、一緒に来なさい」 その少女は表情一つ変えずにとんでもないことを言い出した。 風が吹き、少女の長い髪を揺らす。 さすがに17じゃ死にたくねぇな。 半分呆れ、ちょっと少女をバカにしたような口調で言う。 「死にたくないけど、着いていきたくない場合はどうすりゃ良いんだ?」 すると、少女は手に何か黒い塊を構え、こちらに向けた。 (パンッ) 何かが弾けた乾いた音が、静かな暗闇に響いた。 足元を見ると、右足のすぐ近くのアスファルトには、鉛の弾がめり込んでいる。 アスファルトを砕き、煙が少しそこから上がっている。 おそらく本物の銃だろう。 怖っ!! 一瞬で状況を把握した俺は、猫背の背中をピンと伸ばし、敬礼をしながら叫ぶ。 「着いていきます!!」 静かな空間に、俺の声が響く。 少女は銃らしきものを構えながら、降参した俺にゆっくりと近づいてきた。 どう?この態度の変えよう。 コウモリと呼んでください…… 隣に立った少女に銃を頭に突きつけられ、俺は抵抗もできずに着いていくことになってしまった。 少女の髪からは甘く良い香りが漂ってくる。 なんでこんな子が銃を持ってるんだよ!? どちらかと言うと華奢な少女の体を見つめて思った。 恐ろしいというよりは怪しいな…… 一見おしゃれなお嬢様風の女の子。 着てる服も流行りのものと言うよりは、高そうな品の良い服。 俺と同い年くらいのはずなのに、この少女からはただならぬ威圧感を感じた。 暗い夜道の一人歩きは、男でも危険だということがよぉく分かりました。 そもそもこんな事態になるのは異常とも思えるが、今はその非日常を享受するしかないのだ。 恐る恐る、一向に表情を変えずに俺の隣を歩く少女に聞いてみる。 「あのさぁ、俺どこに連れてかれるわけ?」 「死にたいの?」 会話になりません。 シレっと答え、何事もなかったかのように歩く少女。 勇気出して聞いたのに!!
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