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一瞬、何が起こったのか分からなかった。
「……な…」
絡められた腕に言葉を発することも出来ず、俺は固まった。
一体、何で、抱き付かれてんの。
あ。猫…、猫と間違えてるとかって……だからねーから!
上手く思考が回らずに頭の中で空回りする。
その隙をついて、猫はまたしても俺の腕から擦り抜けていった。
しかし俺は暁の腕の中に捕らわれたまま…。
堪らず身動ぎすると、更に強く引き寄せられて、暁の口許が俺の耳の後ろに触れる。
その感触に肌が粟立って小さく身震いした。
ちょ、ちょっと…!
「あ…暁さ…っ!」
ようやく口から発した言葉はうわずって、それと共に一気に恥ずかしさが押し寄せてきた。
もう、ワケわかんねぇ…っ早く解放して欲しい!
腕の中から逃れようともがくが、簡単には外れない。
何だこの差、力強ぇーよ!
「離して…下さいっ」
「…川崎、ちひろ」
「何っ…ですか?も…っ」
「好きだ」
………………!?
ドスン、と間抜けな音が響いた。
俺が尻餅をついたせいだ。
言葉の後に、相手の腕が緩んだ瞬間自分の身体を支えられず崩れてしまった。
今、小さくも耳元で聞こえた言葉。
………スキ?
好き?って…
暁が……俺、を?
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