目線、その先

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突然の第三者(?)の声に驚き目を向けると、そこにはこの場面には不釣合いなほど可愛らしい子猫が一匹、トテトテとこちらに向かって歩いて来た。 「…へ?ね、猫…」 だよな。 今一瞬、てっきり俺をなだめるために暁が鳴いたのかと思った…ってんなワケない。しっかりしろって そんな自分に馬鹿なツッコミをしている間に、玄関先まで来て暁の足元に擦り寄る子猫。 暁はその首根っこを掴んで胸に抱いた。 腕の中でゴロゴロと気持ち良さそうに鳴く猫を見て、俺は呆気にとられた。 「その猫…」 「…見覚えないか?」 「え?」 何言って…初めて家に来たのに見覚えなんてある筈が… 目を向けると子猫も俺に向かって小さく鳴いた。 (…あれ?) 良く見ると、真っ白で毛の長い子猫の瞳は、綺麗な金色だった。 金色の瞳… 毛も、今はキレイに手入れされているけど…でも前に、そうだ、前に見た時は確か─… (…あ…っ!) 思い出した! 「あの時の捨て猫…!?」 「あぁ。思い出したみたいだな」 「う、うん…お前っ…拾って貰えたのか!?」 暁の腕から猫を渡して貰うと、一気に『あの時』の映像がフラッシュバックして胸が痛んだ。 拾ってやれなかった小さな子猫…公園の端で冷たい雨に打たれて酷く震えていたのを思い出す。 自分んちは小さなアパートで拾ってやることも出来ないくせに、なかなかその場を離れることが出来なかった。 どうにかして飼って貰える宛てを探そうとしたが見つからず途方に暮れた。 だけど、どうしても気になって、次の日も公園に足を運んだその時には…段ボールの中から子猫は居なくなっていた。 誰かに拾われたのか、それとも… そう考えると辛かったから、俺の中であまり思い出さないようにしていた出来事。 だけど、 「拾われてたんだな…良かった…」 胸のつかえが取れたようにホッとした。
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