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「…だからどうした。貴様の領土はすでに私が占領した」
アオイのショコラケーキを残らず平らげたアカネは再びフォークをペロペロと舐めながら、特に興味の無い目でアオイをみた。
「ならばお前の領土を奪うまで!」
アオイは核ミサイルのごとくアカネのショコラケーキを目掛けてフォークを発射した。
ガキッとそのフォークはアカネのフォークによって阻まれる。
「何をする。あぶないじゃないか」
アカネの目は相変わらず興味の無い目である。
「何ぃ~!だいたい何でお前が『三分の二』で、私が『三分の一』なんだ!!絶対切り分けたのお前だろ!!!」
『食べる前に気づけよ』とは、すでに彼女に対する興味を失ったアカネはあえて口に出さない。
「よく聞けアオイ。確かに私が悪かった。だから『三分の一』を私の『三分の二』の中からあげようじゃないか。するとどうだろう…私のもつ『三分の二』は『三分の一』になり、君に渡す『三分の一』と同じになるではないか。これで我らの平等は保たれる」
もっともらしい嘘がアカネのモットーである。
「おぉ!それなら平等だ!…しかしこんな簡単にお前が話を進めるのはおかしい」
妙なところで勘が働く子である。
「何を言う。姉のことを思っての私の好意を愚弄する気か!この鬼!悪魔!」
よく舌の回る子である。
「むぅ…確かにむやみに疑うのはよくないな。」
すっかり三分の一をすでにアカネに食べられたことを忘れているアオイ。
「そうさ。人の好意はありがたく素直に受け取っておくべきだぞ。」
全くもって好意が含まれていないということは別の話である。
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