縄張り

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田崎家にもとうとうコタツの季節がやってまいりました。 そんな平和な午後のできごと…。 「むっ…アカネ。今私の足にお前の冷たい足があたったぞ」 コタツでのんびり足をのばし、寝転がって漫画を読んでいたアオイは、宿題を持ってコタツに入ったアカネにそういった。 「知らんな」 いつも通り特に興味の無いふうに答えるアカネ。 「知らんじゃないだろ!一言謝るのがぁ~道義ってもんだろぅ~!」 アオイはきちんと座り直し、抗議の声を上げる。 「このx=2をこっちの式に代入して…」 もはや姉の抗議の声はアカネにはとどいていない。 「コラー!人の話をきけぇ~!」 「悪いが私は今この連立方程式を解くのに忙しいのだ」 アカネは姉の方を見向きもせずそう答えた。 「宿題やめ~い!」 アオイはアカネの宿題を取り上げて立ち上がった。 アカネは内心『やれやれ、また面倒なことになる』と心底思ったが、あからさまその心境を顔で表現するだけにしておいた。 「何だその目は!」 「死んだ魚の目の真似だ」 「やめろ!取りあえず縄張りを決める」 「縄張り?」 するとアオイは捨てる雑誌をくくる用に母がいつも置いてあるビニール紐を持ってきて、コタツを半分にわけるように上に置いた。 「いいか、この紐からこっちが私で、そっちがアカネだからな。この領域を超えた奴には重い刑罰だぞ!」 ならば先程のトラブルは足をアカネの縄張りまでのばしていたアオイが悪いのだが、アカネはこれ以上何も言わなかった。 これが彼女なりの姉への優しさ(いたわり)である。 .
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