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「あっ! ごめんなさい」
「おぉ! 気をつけてな。今日という日に何かあってはたまらんよ」
座り込んだ年配の男の前に、商品であろう、値札のついたガラクタのような物が乱雑に並べられている。
それに足をぶつけてしまったらしい女性が、肩越しに謝罪の言葉をかけた。
「皆、随分と高揚しておるな」
「じぃじ、そりゃ仕方ないよ。今日は、じぃじの言った通り特別な日だもん。それより本当なの? 30年前には5つも国があったなんて! そこら辺は良く知らないんだ。もっと教えてくれる?」
じぃじと呼ばれた男は、足早に走り去って行く人達を目で追いながら、隣の少年に声を返す。
「あぁ勿論じゃ。まずはそうだな……、5大国は方角によって分かれていたんじゃ。北にダラウス帝国、南にユークリア王国、東にセネス大帝国、西にニオハラオニア國、中央にウセラ=ウスラモニカ。とまぁ……。
文化も宗教も5種多様じゃよ」
それゆえな……と語尾を濁すじぃじに、少年は不満げな表情を浮かべて首を傾げる。
「なんだそれ。国の名前しか分からないんじゃ、僕は何も理解出来ないじゃないか」
「うん? 文化や宗教なんざ、まだお前には早いんじゃ! それに、話し出したら終わらないんじゃよ」
そう言うと、少年の不満げな顔を無視して豪快に笑い声をあげる。
その直後に辺りに凄まじい轟音が響いた。
ドォォォォンッ! と一発。
それに続いて、ドンッドンッ!と短く2発。
「おぉ、始まったようだな!」
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