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ある日、高校初めての夏休みに入ってから少し経った日。私は、部屋で真と二人っきりだった。
前にもあったこの感じ……何だか凄く嫌な感じがした。
「それで?話ってなに?マコちゃん?」
話しがあると言って家に来た真は、顔を赤らめながら俯いている。
(ははぁ~ん、これは恋の悩みですかな?)
これまで、真は恋をした事が無かった。
性同一性障害の彼女は、どこと無く恋愛に臆病になっていたのかもしれない。
とにかく、私達の間で恋バナは全く無かった。
(好きな男は?って聞くと『私、男だし……』とか言っていた真に遂に春が来たのか?)
少しだけ、本当に少しだけ、懐かしい痛みを感じた。
「えっとね、みーちゃん?」
やっと口を開いた真を見ながら、極めていつも通りに返事をする。
「なに?」
真は、深呼吸をしてゆっくりと、真剣な顔で私を見た。
その顔にドキッとした私だったが、真は女!と心の中で三回唱える事で何とかごまかした。
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