紅い雪と白い華

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 村に何かが起こる事は今日までなかった。  周りを山々に囲まれ、他の村や町、都と呼ばれる場所から遠く離れている。  余所で戦が起こったとしても、この小さな村にまで危害が及ぶ事はなかった。  ただ一年前より事態は変わっていった。  風の噂で耳にする。村や町で戦ばかりが起こる為、行き場を無くした人々が山賊や盗賊となり、各地で騒ぎを起こしている、と。  つい先日、ここから一番近い村が山賊に襲われたと聞いた。  それでも、今までなかった事が起こる訳がない、と少なくとも少年は思っていた。いや、村の人々全員がそう思っていたに違いない。  もしこの村も危険だと感じていたのならば、それなりの対処を施していたであろう。  村の一人一人の力では、山賊などという無粋な輩に太刀打ちなど出来るはずもない。  だが、個ではなく集団で迎え撃つ事が出来ていたのであれば状況も一変していたはず。  そうしていれば、また次の日からはいつもの安穏とした日々を送れたのではないか。  考えれば考える程、後悔だけが募ってくる。
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