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「あんまり無理すると体に毒じゃぞ。
お前さん最近寝とらんじゃろ?」
そうアースが言うと、ハバドはコーヒーの入ったコップを少し離して嘲笑した。
「夜な夜な俺の書物をこっそり持ち出して頑張ってる誰かさんに言われたくないな」
「ふん。ワシはお前と違って体力があるからな」
目をそらしながら腕組みをするアースに、再びコーヒーを飲みながらフッと笑いかける。
「よく言うよ。目の下に隈まで作ってさ…」
するとアースは慌てて背を向け出し、知らん顔をしだした。
それを見ながらハバドは口の中で小さく笑い、本に目を戻す。
「そっちはそっちで何か分かったら教えてくれ」
そう言うと、部屋を出ようと扉を開いたアースは「あぁ」と返事した。
そして出ていきざまにアースは振り返り、笑いを堪えながら口を開く。
「おい、ハバドよ」
「ん?」
再び本から目を離してハバドは扉の方を見た。
「人に物を言う時は自分の顔をよぉく確認してからにするんじゃな」
アースはニヤケて自分の目の下に出来た隈を指差しながら、ゆっくりと扉を閉じた…。
1人残されたハバドは苦笑しながら、思わず目の下を触る。
「負けず嫌いなじじいだな…」
その呟きをせせら笑うかの様に、窓からの隙間風がピューっと吹いた。
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