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言い争いを始めて約十分…
2人はようやく、めでたい誕生日に自分達は何をしているのだ、と気づく。
「むむむ…、それではこういうのはどうじゃ?
ワシとハバドで同時に抱くと言うのは」
アースの提案にハバドは息を切らせつつも頷く。
「分かった…、それで手を打とう」
2人は同時に頷いて恐る恐る病室の扉を開ける。
そしてまだ怒っている看護婦さんにきっちり謝って、2人は赤ん坊を同時に抱いた。
「や、やっぱり可愛い…」
アースは満足そうにニヤケながら赤ん坊をあやす。
「僕の子だからね」
「ワシの孫じゃからじゃ」
「「あぁ!?」」
互いの言葉に2人は再び火花を散らしたが、看護婦の目が光り出したので、とりあえず不戦にしておいた…。
次にハバドはベッドで横になっている妻のアンリに目をやり、その近くに座り込む。
「良く頑張ったな、アンリ!」
アンリは背中の真ん中辺りまである長い金髪に優しげなおっとりとした人物。
彼女は上品にフフッと笑って、アースにあやされている赤ん坊を見た。
「男の子だそうよ。
名前はもう決めてある?」
アンリの問いにハバドは満面の笑みを浮かべる。
「もちろん。男の子の場合はシモンだ」
「シモン…良い名前ね」
アンリは口に手を置いて小さく笑った。
アースもその笑みを見て厳格そうな表情が和らぐ。
「シモンは幸せじゃの~。
・・・・・・
頼もしいおじいちゃんと優しいお母さんを持って」
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