序章

3/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
いつしか、私は偽りの笑顔をする様になった。 けど、そんな事で、私自身の日常が変わるなんて思わなかった。 いや、そんな日常に、変わって欲しく無かったのかもしれない。 今日も、学校に行けば笑顔で迎えてくれる友人。 本当に信用しても構わない存在なのか分からない それでも、私はこうやっている時間やこの瞬間が好きだ。 だから、私はその時だけは本当の笑顔で笑う。 「ねぇねぇ、聞いた?」 「何を?」 「今日、転校生が来るんだってーっ!!しかも男子!」 転校生―――・・・ 今は12月。 こんな時期に転校生なんて、珍しい。 私は楽しそうな友人に対して客観的に聞いていた。 自分には関係ない、と。 そう思っていた。 「はいはいっ、皆席に着いてー」 急に聞こえた担任の声。 私は友人と小さく笑い合い、自分の席に着く。 担任の言葉により入ってきたのは青年。 黒髪に赤いメッシュを入れて、制服は少しだけ着くずしている。 身長は大体170半ば辺りだろう。 少しだけ釣り上がった目尻に、だるそうな態度。 でも、その珍しい紅い瞳だけが何処か希望に満ち溢れている。 「えー、自己紹介を」 「有澤祥紀(アリサワ ヨシキ)」「彼はご両親の都合によりこちらに転校してきた。皆、仲良くしてあげるんだぞー」 担任が言うと皆が当たり前だ、と笑った。 ふと、有澤くんを見やれば彼も気付いたのかこちらを振り向く。 そして、その瞳を大きく見開いてから小さく笑った。 それはなんだか、勝ち気な笑みで・・・消極的で引っ込み思案な私には苦手なものだった。 「あー、席はだなー・・・」 ぐるり、と教室を見回す担任。 不意に私の方を見て、その視線を止めた。 私の左隣は友人の"相崎迴(アイザキ メグル)。 そして右隣は"居ない"。 「秋坂(アキサカ)の隣が空いてるな。あそこの大人しそうな奴の隣だ。おい、秋坂手を挙げろー」 担任が言う。 私は小さく溜め息を吐いて自身の右手を挙げた。 するとそれに従いやってくる有澤くん。 私の隣の席に座ると彼は意味深な笑みを浮かべて私を見てきた。 「ヨロシク、秋坂さん?」 「うん、よろしくね」 彼は私の苦手なタイプだという事実。 それから、 "オレらの姫さん" 小さく呟いた彼の言葉。 その時は分からなかった。 そこから、私の日常はどんどんと変化していき、"非日常"に巻き込まれるなんてことに。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!