一章

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席が隣、というのはなんと不便なのだろうか。 私は有澤くんが苦手。 だけど、席が隣というだけで有澤くんの学校案内まで担任に頼まれてしまった。 正直、私はやりたくないが頼まれたし、仕方ない。 「それで、此処が職員室。あっちが図書室で」 「あー?皐月(サツキ)?」 聞き慣れた声。 私がそちらを向くと、そこには3年生の"甲賀旭(コウガ アキラ)"先輩が気だるそうに立っていた。 肩に掛かりそうな位の長さの金色の髪を後ろで緩く縛り、その灰色の瞳には眠さからか涙が浮かんでいる。 右耳には蒼いピアス。 上着は全開で、Yシャツは第3ボタンまで外している。 身長は確か自分で177cmだと言っていた。 「旭先輩」 「おー。・・・ん?そいつ」 「・・・あ、転校生の有澤祥紀くんです。有澤くん、こちらは3年生の甲賀旭先輩だよ」 「・・・どーも」 「・・・ふーん、皐月。帰り、また送るから待ってろよ?今日は秀哉(ヒデヤ)も一緒だからな」 旭先輩に優しく頭を撫でられて私ははい、と返事をした。 そんな私に旭先輩は優しく微笑み、有澤くんを一瞥して去っていった。 「ん?旭、どうした?」 「秀哉・・・あいつが来た」 険しくなる秀哉の表情。 旭は小さく笑い、右手で拳を作り見る。 「此処からが本番だ。今日、皐月を送ると伝えておいた」 「あぁ・・・危険だからね。もし、彼女に何かあったらと思うと僕も寒気がしてしまって仕方がない」 「あぁ・・・・・そう、だな」 二人は小さく笑い合った。 そして、またそこから動きだした。 ただ、今の日常を過ごすために。
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