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中年は、足に力が入らず、地面に膝を着く。
まだ少しだけ残っている雪に膝を沈め、何事かを考えている。
そして、突然駆け出した。
……逃げたのだろうか?
と思っていたが、中年は半時間程で戻って来た。
一つのシャベルを抱えて。
「はぁ、はぁっ……!!」
少し息を整えた後、小生の足元を堀り始めた。
なる程、青年の屍を埋める為のシャベルか。
……幸い、この山に滅多に人は訪れん。
青年の知り合いが、青年が帰って来ない事に気付き、探しに来ん限り見つかる事は無いだろう。
中年は、必死にシャベルを動かす。
まだ冬なのに、汗まで垂らし。
一定の深さを掘り終えた中年は、青年の屍を穴へと引きずり、其所へ納める。
誰にも見付からぬよう、気付かれぬように。
早急に。
「……すまない、……!!謝って許してくれとは……、人の命を奪う事がそんなに軽い事だとは思ってねぇ。けど、けどな……!!俺も必死だったんだ!!鹿を一頭!一頭捕れば、俺の娘は助かるんだ!!だから、この鹿は貰って行く。……本当に、すまなかった……!!」
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