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「……行っちゃった」
小さな溜め息と共に現れたのは、銃を担いだ青年であった。
鹿を撃ち捕ろうとしたのだろう。
別に小生は、猟師に偏見は無い。
どちらかと言うと、彼らの発する空気はどことなく落ち着いていて、好ましいとも言えよう。
彼らはその独特の和ましい空気で、森の一部に溶け込む事が出来る。
……まぁ、撃ち捕られた所は見た事がないのだが。
青年は小生を見上げ、ほうっと溜め息をつく。
今さっきのとはまた違う、安心したような。
「立派な……」
憧れに近い感情を込め、小生を見上げるので、少し居心地を悪く感じた。
青年は、雪の上を歩いてこちらまできた。
そして、手袋を外した後、ふわりと小生の腹にその掌を当てる。
小生に触れる為にいちいち手袋を外すとは、なかなか好感を持てる青年だな。
手袋を外し敬意を払う青年を、小生はやんわりと受け入れた。
青年は、10秒程そうした後に、小生から手を離し、手袋をはめ直す。
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