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次の日。
やはり、青年は小生の所へ来た。
昨日より、幾分か遅い、太陽が真上を通る時刻に。
「足元、借りさせてもらう」
そう言って、青年は小生の足元に座り込んだ。
昨日と違い、今日は小さな荷物を肩にかけていた。
荷物を下げ、鞄を開けてから丸い包みを取り出す。
どうやら握り飯のようだ。
「俺は、母に満開になったあなたを見せると誓ったんだ。だから、今日からは本気で狙わせてもらう。すまんな、山の住人を減らす事になる」
青年は、包みを開け、握り飯を頬張りながら自らの誓いを小生に告げた。
その後、青年は何日も通いつめ、その度にぽつりぽつりと漏らす話を繋げると、ようするにこうなる。
青年には、病気の母親が居る。
その母親を救うには、春までに手術する必要があった。
手術には莫大な費用が必要だった。
知り合いに金を貸してくれと頼んでも、誰も見向きもしてくれなかった。
知り合いの一人が言った。
「鹿を三匹捕ると、その値段になる」と。
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