始まりの笑顔

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『もういいよ!』 『どうも、ありがとうございましたー…』 下げていた頭を上げる。 …………。 ほとんどが空席の会場に、笑顔は無かった。 小さいため息がもれる。 相方の後ろを歩いてそでにハケる。 ……コイツの背中、こんなに小さかったっけ… 相方…望月透(もちづき とおる)は俺を見ることなく楽屋に帰っていった。 『あんま気にすんなって。若手はな、あんまウケなくて当たり前なんだかんな。』 ポン、と先輩に肩を叩かれた瞬間、ああ、またスベッたんだ。って実感して 封印したはずの涙腺がまた緩んだ。 『黒滝?』 『す…ませッ……』 先輩の声から逃げるように、俺…黒滝懸(くろたき かける)は楽屋へと走った。
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