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楽屋……もとい、控室には他の芸人はいなかった。
みんな出番なのだろう。
相方と二人きりになると、また安心して涙がでてくる。
『…何、泣いてんだよ。』
少し不機嫌そうな望月の声がして、顔をあげることができないまま口を開いた。
『ッ……ネタ…ウケないな…』
控室に時々響く鼻を啜る音が俺だけのものじゃないところからすると、望月も泣いてるのだろう。
『…まだまだなんだよ。俺達。悔しいけど。』
涙声で言った望月は、会場の方から聞こえた笑い声に拳を握った。
悔しいよな。
俺も、悔しくて悔しくてしかたがない。
俺らのネタ中はあんなにも無表情だった客が、あんなに少人数なのにここまで届く程の声で、笑ってくれるんだ。
『…何でッ…笑ってくんねぇのかな…?』
おもしろくねぇからだろ、と小さく呟いた望月は、天井を見上げると、ひどい鼻声で繰り返した。
『まだまだなんだよ、俺たち…』
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