【元サラリーマン②】

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どこの学校で就職したいのかはもう決まっていた。それは最近新しい校舎になった、妻と息子が通っている中学校だった。 別に妻と息子とよりを戻すつもりはない。ただ…元気な顔が見たいだけだ。もし学校から断られても素直に諦めるつもりだった。 それにしても外は物凄い暑さだった。公園から中学校までは徒歩で3時間ほどだ。腕時計を見る。もう9時半だった。電話はしなくてもいいのか?と一瞬思ったが、携帯は解約していることに気がついた。 しかし、最近は物忘れがひどい。年を取ってきたからだろうか? 2時間ほど歩いて休憩することにした。表通りでねころぶわけも行かないので、100円ショップの脇にある細い裏通りで休むことにした。ちょうど良く、ゴミ箱があったのでその上に座ったが、中からゴソゴソ音が聞こえたので、呻き声を出しながら飛び降りた。 11時半。中学校はもうすこしなのだが、授業中は忙しいと思ったので、昼休みに行くことにした。 空を眺めていると、まるで自分が生きている世界とはかけ離れた世界に感じた。ぼんやりと雲が妻と息子の形になっていくような気がした。いつのまにか涙が頬を伝っていた。
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