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彼女と別れてから1ヶ月。別に別れたくて別れたわけじゃない。ただ、心の気休めがほしかったのだ。そんなことを別れ際に言えば殺されそうな雰囲気だったので、彼女には理由は言わなかったのだが…
心地よい風が職員室を吹き抜ける。とてもいい気持ちだった。目を瞑ってみる。彼女の笑い顔がなぜか浮かんできた。どうしてなのか自分でもさっぱり分からなかった。
煙草でも吸うか、とさっき取り出した煙草を取り出しライターで火をつける。この時間が俺にとって一番幸せだ。しかし、その幸せは、一瞬で砕かれることになった。
「白田先生!新しい数学の先生が来られたのでちょっと来てください。」
「あぁ?」とは校長先生だったので言わなかったが少しムッとした。
新しい先生?そんな話聞いてないけどな。
俺は吸いかけの煙草を携帯灰皿に入れようと蓋を開けた―そのときだった。
ビュ―
いきなり大風が俺を襲った。
煙草だけが職員室内に飛んでいったのをスローモーションのような動きで見ることができた。
あ。
そう思った時には火が床に燃え移っていた。
あっという間に風で煽られ、火の勢いは増した。
火事の時は窓を開けるんだっけ?
そんなことを考えている場合じゃなかった。キャーと女性の先生が叫ぶのが聞こえた。
急いでドアを閉め、安全な場所へと逃げた。
バチバチと音を立てて燃え上がっていく。消火器を探したが一向に見つからない。
校長のやろう…消火器ケチったな!
ジリリリリリと
火災報知機の音が廊下に響いた。
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