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周りから自分に視線が注がれる。たった数秒間だけど、慣れないせいか、声が震える。自己紹介というものは、どうにも苦手だ。
やっとのことで終えると、一気に緊張が解け、椅子にくたっと座り込んだ。
そしてもう一度周りを見渡す。新しい教室に、新しいクラスメイトたち。昨日の入学式では自分のことで精一杯で気にする余裕など無かったが、いろんな人がいる。ほとんどが初めて会う人。話したこともない人たちだ。
また一から友達を作っていかないといけないのかと思うと、めんどくさい。憂鬱だ。
私はもともと社交的でなく、人見知りが激しいのであまり自信はない。けれど、なんとかしなければいけない。
そう考えていると、ますます憂鬱になった。
ふと我に返ると、もう自己紹介も最後の1人となっていた。
出席番号が一番後ろの女子。
高い位置でキリリと結んだ長い黒髪。私より10センチ以上は高いであろう、身長。少しだけ低めの心地よい声。
───綺麗な子…
パッと見て、そう思った。
ただ、それだけ。
それだけなのだけれど
ハヤカワ ユイ…
頭の中でぐるぐると、彼女の名前が繰り返される。
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