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「こっちこっち!」 嬉しそうなミズホに引っ張られながら、3人が居る席まで自分のお弁当と椅子を運んでいく。 あまりにも急かされるものだから、途中で何度か転びそうになった。 見ると、3人は既にそれぞれのお弁当を広げている。そして当たり前のようにそこに加わるミズホ。 私はどうすれば良いのかわからず、ちょこんと椅子に座った。 とりあえずお弁当を食べようか。私は箸に手を伸ばした。 「アキちゃん?」 声がした方をちらりとみると、話したことのない少し怖そうなあの子。 「…な、なに?」 名前は…なんだっけ…? 「あ、うん。さっきから一言も話さないから、どうしたのかなって。」 あぁ。いらない心配をどうもありがとう。 「…ごめんね?なんでもないよ。」 「そっか。なら別にいいんだけど。 あ、そうだ。アキちゃん、私の名前わかる?」 急にそんなことを言われるなんて、予想外。どうしよう。覚えてない。正直、自己紹介なんて一番最後しか聞いていない。 「アサミだよ。…分からなかったでしょ?」 「…うん。ごめんなさい。でも、どうして?」 アサミはイタズラッ子のように笑った。 「アキちゃんは素直だね。 暇なときにね、人間観察みたいなことしてるんだ。アキちゃん、自己紹介のときずっとぼーっとしてたでしょ?」 だから、お見通しってわけ。 「アキは昔からぼーっとしてるからね~。」 隣でハルカちゃん─同じ部活の、私よりも背が小さい可愛らしい子──と話していたミズホが口を挟んだ。 「ミズホ、うるさいよ。もう…」 それにしても、見られてたなんて恥ずかしいなぁ…。完全に気を抜いていたから、きっと酷い顔をしていたに違いない。
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