5人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「こっちこっち!」
嬉しそうなミズホに引っ張られながら、3人が居る席まで自分のお弁当と椅子を運んでいく。
あまりにも急かされるものだから、途中で何度か転びそうになった。
見ると、3人は既にそれぞれのお弁当を広げている。そして当たり前のようにそこに加わるミズホ。
私はどうすれば良いのかわからず、ちょこんと椅子に座った。
とりあえずお弁当を食べようか。私は箸に手を伸ばした。
「アキちゃん?」
声がした方をちらりとみると、話したことのない少し怖そうなあの子。
「…な、なに?」
名前は…なんだっけ…?
「あ、うん。さっきから一言も話さないから、どうしたのかなって。」
あぁ。いらない心配をどうもありがとう。
「…ごめんね?なんでもないよ。」
「そっか。なら別にいいんだけど。
あ、そうだ。アキちゃん、私の名前わかる?」
急にそんなことを言われるなんて、予想外。どうしよう。覚えてない。正直、自己紹介なんて一番最後しか聞いていない。
「アサミだよ。…分からなかったでしょ?」
「…うん。ごめんなさい。でも、どうして?」
アサミはイタズラッ子のように笑った。
「アキちゃんは素直だね。
暇なときにね、人間観察みたいなことしてるんだ。アキちゃん、自己紹介のときずっとぼーっとしてたでしょ?」
だから、お見通しってわけ。
「アキは昔からぼーっとしてるからね~。」
隣でハルカちゃん─同じ部活の、私よりも背が小さい可愛らしい子──と話していたミズホが口を挟んだ。
「ミズホ、うるさいよ。もう…」
それにしても、見られてたなんて恥ずかしいなぁ…。完全に気を抜いていたから、きっと酷い顔をしていたに違いない。
最初のコメントを投稿しよう!