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白菊のシーツが脈打った。 其れは桜の襲ねであった。 姫はガタガタと、此の地には不釣り合いである少女の紅梅を貼付けた衣を大気に曝し、恐怖に震えた。 姫は処女であった。 が、売春婦であった。 白菊のシーツの中には生き物が潜み、まだ見ぬ呼吸さえしていなかった。 が、脈打つのは確かだった。 狗は告げる。 「恐がらなくてよい、貴女様は選ばれたのだ。其の事を誉れと思う可きなのだ」 姫は逃げ出せばよかった。 だが姫には逃げる可き路が用意されていなかった。 逃げる? 何処に? 姫は問うたが答えなど有る筈もなく、ガタガタ震えるしかなかった。 今、シーツの底で確かに呼吸された。
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