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河中さんは僕の方に向き直った。がさがさと寮の資料を広げて説明を始める。見れば見るほどどこの豪華ホテルかと言いたくなるような設備だ。まあ、大きさはこのくらいないと高等部全員入らないんだろうけども。
「寮の説明をするな。ここは十四階建てで、最上階が生徒会、二~五階が一年、六~九階が二年、十~十三階が三年で、一階が共有スペースだ。特待生と生徒会は一人部屋、その他は二人部屋。君はそこの桐山祐樹と同室で、九○一号室だ。ちなみこれは成績順位で決まるから」
「へぇ……」
成績順位で部屋割りが決まるのか。僕の成績は悪いものじゃなかったはず。それに九○一号室……まさか。
「あの、まさか、桐山が今まで学年トップなんてことは……」
「あるな。信じたくない気持ちはよーくわかるが、桐山祐樹が第二学年進級試験首位だ。ああ、でも、君のほうが試験の点は良かったけどな」
からからと笑う河中さんの言葉は、最早僕には届いていなかった。
こんなやつが学年トップだなんて世も末だろう。一応ここの偏差値は75はあるんだけれど。
「二人してバカ扱いしないでよー。ボクだってちゃんと勉強してるんですっ。ああでも意見が合って頷き合う二人萌えー! さあほら河中さん! 惚れちゃいましたって告っちゃえ!」
「はぁ……」
予期せず重なった溜め息に、顔を見合わせて苦笑した。それにまた騒ぐ桐山を完璧なまでに無視して話す。
「桐山……いつもああなんですか?」
「時々、は、まともになるかな。でも俺の前では大体ああだ。バレてるから自重する気がないらしい」
「大変ですね……」
力なくひくりと口の端を震わせた河中さんに、心から同情の視線を送った。
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