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着いたのは見晴らしのいい角部屋だった。この学園には緑が多く、とても綺麗だ。
ただ、虫なんかの被害も多いんじゃないかと思う。今度頼んで虫除けスプレーを送ってもらおう。
「右側がキミの部屋だよ。お風呂はそっち、ここのテレビは共有物だから」
「うん」
「それでさ。単刀直入に聞くけど、変装してるでしょ?」
ああ、やっぱり来たか。そりゃあここまで顔が見えないと不気味だし、きちんと手入れはしているといえ、不潔に見えるだろう。
わざわざこんな格好をしてるんじゃなきゃどれだけ外見に無頓着なんだ。
この程度は言ってもいいことだ。
「うん。変装ってほどじゃあないけどね。ほら」
カツラと眼鏡を外してみせる。すぐに落ちてくる前髪で顔は見事に隠れたままだ。
「あ、ホントだ。取っちゃっていいの?」
「うん。強制されてるわけじゃないし、ずっと着けてたら髪にも悪いから」
「そっか」
桐山はまじまじと僕を見たあと、不意にため息を吐いて笑った。こいつも例に漏れず顔はそこそこいいから、やたら絵になるのにイラッとした。
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