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ラウドは人々を睨み、深く思う。
愛などこの世には不必要だ。
偽りだらけの世界、関係、感情。
問いてみよう。貴方は愛する者がいるのだろうか。
答えてみよ。それは本当の思いだと自信を持って言えるのだろうか。
否、この世に愛情などない。
母親の愛情を受け、子は育つ。ならば、捨てられた子はどうやって育ってきたのだろうか。
答えは一つ。
一人で世を見据えて育った。
たった一人で。
父親など大嫌いだ。母親を捨て、別の女性を傍に置いた。
さあ、今一度問おう。他人を信じて──良い事はあるのだろうか。
自分を見てくれる人はいるのだろうか。
“おまけ”ではない。
金。容姿。権力。人々の目に映るのは“おまけ”のみ。
薄皮を被って本性を隠す人間達を信じる価値などない。
例外はない。皆、腐っている。勿論、それは己も。
否、己が一番の──。
「……クソ野郎だよな」
ラウドは隣に寄って来た女性に気付かれないように小さく呟く。
ツキン──心の奥底が痛んだ気がした。
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