§00 プロローグ

2/2
24025人が本棚に入れています
本棚に追加
/638ページ
 ラウドは人々を睨み、深く思う。  愛などこの世には不必要だ。  偽りだらけの世界、関係、感情。  問いてみよう。貴方は愛する者がいるのだろうか。  答えてみよ。それは本当の思いだと自信を持って言えるのだろうか。  否、この世に愛情などない。  母親の愛情を受け、子は育つ。ならば、捨てられた子はどうやって育ってきたのだろうか。  答えは一つ。  一人で世を見据えて育った。  たった一人で。  父親など大嫌いだ。母親を捨て、別の女性を傍に置いた。  さあ、今一度問おう。他人を信じて──良い事はあるのだろうか。  自分を見てくれる人はいるのだろうか。  “おまけ”ではない。  金。容姿。権力。人々の目に映るのは“おまけ”のみ。  薄皮を被って本性を隠す人間達を信じる価値などない。  例外はない。皆、腐っている。勿論、それは己も。  否、己が一番の──。 「……クソ野郎だよな」  ラウドは隣に寄って来た女性に気付かれないように小さく呟く。  ツキン──心の奥底が痛んだ気がした。 .
/638ページ

最初のコメントを投稿しよう!