冬の少女

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 玄関の扉を開いた瞬間、冷気を帯びた風が身を襲う。俺は思わず、一瞬その場に立ちすくんでしまった。  つっ立っているだけでは余計寒いとすぐに気が付き、俺はマフラーを指で直しながら、いつもより少し早足で家を後にした。  今年度一番の冷え込みらしい。 凍てつくような寒さ……それは決して大げさな表現なんかじゃなく、俺の鼻先は本当に凍ってしまいそうだった。  温暖化温暖化、と世間じゃ言われているが、今日のこの冷え込みからは、温暖化の影響なんて欠片も感じられない。暖冬だなんて、嘘っぱちに決まっている。  なんて、悪態をついた所でどうしようもない。それがどうした、と言わんばかりに自然の息吹きが余計にきつく吹き荒れるだけなのだ。  前髪を盛大に乱す北風に、思わず目を瞑ってしまう。どれだけきつくマフラーを巻いていようと、顔に打ち付ける風だけは、どうしようもなかった。  空には、重苦しい鈍色の冬の雲が敷き詰められていて、太陽の光を完全にシャットアウトしてしまっている。  朝は曇りでも、午後には晴れ模様になると、家を出る前の天気予報では言ってたっけ。  上空を覆う雲が数時間後には消え失せるよう願いながら、俺はさらにマフラーに顔を埋めて、学校への足取りを速めた。
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