冬の少女

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 くそっ。やっぱり天気予報なんてアテにならないじゃねえか。  俺は心の中で、今朝と同じように悪態をつく。相変わらずそこにある、鈍色の雲に。  結局、天気予報の晴れ模様宣言は見事に空振りし、現在午後一時。昼休みの今は、朝よりは少し気温が上がったんじゃないか程度にしか気候は変わっておらず、頬を攻める風も、もれなく吹き荒んでいた。 「さみぃ……」  急に吹いた、今までよりはるかに冷たく強い風に、思わず声が出てしまった。  思わず、慶次に借りたネックウォーマーに顔を埋めそうになるけど、野郎が付けている香水の臭いがプンプンするため、鼻まで埋めるのはどうしても気が引ける。  そもそも、なぜ俺が借り物のネックウォーマーまでして風を浴びながら独り歩いているのかというと、この香水臭いにっくき親友のせいなのだ。  昼飯も食べ終えた俺と慶次ともう一人の親友、嘉樹は、食後のジュースを賭けて大富豪をやることになった。最下位の奴が奢りと買い出しの両方を課されるという、中々にシビアなものだ。  俺の手札はそれなりに大きな数字が揃っていた。これはまず負けないだろうと確信できるくらいに、大きな。  ……今の俺の状況から、その数字の大きさが仇になったのは言うまでもないだろう?  そう。慶次の野郎に革命を起こされてしまったんだ。  俺の手札の一番小さな数字が九で、ジョーカーはあるものの、それでも革命返しをするまでには至らず、結局は手も足も出ないまま、俺は、二人がすいすいカードを出すのを傍観するしかなかったのだった。
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