冬の少女

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 しかも、二人が俺に頼んだのは、よりによって教室から一番遠い自販機にしか入荷されていないパックの抹茶カフェオレだった。  あいつら二人が抹茶カフェオレを飲んでいるところなんて、半年以上の付き合いの中でただの一度も見たことがない。十中八九、俺への嫌がらせだろう。  だけど、いくら俺が文句を垂れたところで、功を奏しないのは目に見えている。  なんたって、これは敗者のバツゲームなのだから。  例の飲み物が売っている自販機は、校内の一番隅にある副教室棟と呼ばれている二階建の小さな校舎のすぐ脇にある。  この副教室棟という校舎は、普段は使われないような特別教室や空き教室が収容されているだけで、授業以外に自発的に訪れる機会なんて滅多にない。それこそ、今の俺みたいに抹茶カフェオレを買いに行くくらいなものなんじゃないだろうか。  嘉樹曰く、副教室棟に行くときは、途中にある中庭を抜ければ少しショートカット出来るらしい。俺はその教えを活用し、中庭を通ろうとした。  この学校の中庭は少し変わっていて、バスケのコートくらいの広さのスペースを取り囲むようにして幾つもの木が植樹されており、その木に囲まれた空間を、中庭と呼んでいた。  俺も何度か中庭の横を通ったことはあったけど、実際に中庭に入るのは、今日が初めてだった。
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