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うわ……これが中庭か……。
校舎の角を曲がってすぐに、例の中庭は在った。そしてそれは、非常にもの悲しい風景だった。
二十メートルは超えているんじゃないかと思われる、植樹された幾多もの大木は、ほとんどが身ぐるみを剥がされていて、ほんのわずかに身に纏っている少量の葉っぱが、余計に殺風景を助長させている。
見るからに寒く、寂れた外観は、初めて見るのにもかかわらず、まるで冬の代名詞のように感じられた。
……春に見たときは、もっと立派だったんだけどな。
半裸の木々たちは、風に枝をしならせて、一つ、また一つと葉を落とす。ふと地面に目をやると、枯れ葉が流されてきて、ちょうど俺の踏み出した足の着地地点に静止したそれを、俺は思わず踏んでしまう。
クシャッと、よく通る音を出して、踏み躙られた残骸は、次に吹いた風に散らされた。
俺から見て南側に、入り口らしき植樹されていないスペースが少し狭めにある。そこから、俺は初めて中庭に一歩足を踏み入れた。
……なんだここ、めちゃくちゃ寒いじゃねえか。
中庭の敷地内は、まるで嫌な魔法がかかってしまったかの様だった。
そびえる木と木の間から、すきま風の吹くようにしている。ビル風と同じ要領で、吹き荒れる風の強さが、外と内ではまるで違っていたのだ。
俺は早く、この身が竦みそうになる強い風の吹く中庭から抜け出したかった。
だけど、俺は顔を上げた先に見えた光景に、思わず立ち止まってしまう。
あれ……って、女子……?
視線の先、四方に一つずつあるうちの一番奥のベンチに座っていたのは、風に吹かれている一人の少女だった。
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