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まだ肌寒い夜風が、ひゅるりと身体を冷やす。真っ黒な闇にぼんやりと欠けた月が浮かび上がっている。
長い出張でやっと帰ってこれて、いち早く愛しい恋人に会いに行こうと思ったら今はこんな夜中。みんな寝静まっている。
何も無ければ、意外と寝るのが早い総悟のことだから帰る日にちを伝えていないので当然、今この時も夢の中にいるのだろう。それならば、起こさずに顔を一目みてくるだけにするか。
沖田の部屋に足を運んできてみたのだが、襖の間から覗いた先には栗色は見当たらなかった。人の気配がしなくて、不信に思っていたら案の定、だ。
起きているのだろうか。こんな、夜中なのに。思い当たるとすれば厠くらいしかない。
静かに襖を閉めると後でもう一度、訪れることにして動きにくい隊服を先に着替えることにした。
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