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改めて部屋を見回す。
本棚は片方埋まり、机もそれとなく物が置かれていた。
相部屋の人がいつの間にやら来てしまっていたのだ。
「ねぇ、君の名前は?」
そう問われて、僕は腹をくくることにした。
「南…央子、です」
姉の名を語る自分の声が酷く震えていて、少しおかしかった。
「南さん」
こちらを何ら疑うことなく、反芻するように呟かれたのは名字の方で、僕はなんとなくほっとする。
と同時に、相手を観察する余裕も少し生まれた。
相部屋の安東さんは背が高くてすごく綺麗な人だった。声も落ち着いていて、形よく引かれたリップがすごく大人っぽい。
きっと「お姉様」とか呼ばれちゃうタイプだろう。
「……どうかした?」
あまりにジロジロ見すぎたのか、安東さんが居心地悪そうにする。
僕は慌てて首を力一杯振って返事をするけど、なんだか印象を悪くしたみたいで、安東さんに怪訝な顔をされてしまった。
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