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僕、粟井紫(あわいむらさき)には、目下のところ二つ悩みがある。念のために言っておくと、名前ではない。意外と僕自身は気に入っている。
まず一つ、容姿についてだ。百四十センチの低身長に加え、とても女の子女の子した顔。正直、自分でも性別を間違えて生まれてきたとしか思えない。だがしかし、ところがどっこい……まあなんでも良いけど、僕は男だ。せめて声は、と思っていたけど、変声期を越えた十六の今でも高いまま。ある意味予定通りなのかもしれないが、こっちとしては大迷惑。女と間違えてナンパしてくる男や、男でも良いなんて迫ってくる変態。実際の悩みはこっちだったりする。
容姿に関しては、名前と同じで気に入っているのだ。得をすることが多く、損をすることが少々。それでも、気に入っている。
中学の時、女物の洋服を着始めた頃は、両親が本気で性転換させようか悩んだらしい。僕としては、男物はどのサイズも大きいし、女物はぴったりのサイズがあるから着ているだけだ。女物の方が可愛いし、良いデザインの洋服が多いのも、理由の一つだったりする。閑話休題、まる。
二つ目の悩み。それは今の状況。全ては、眞銅良子(しんどうりょうこ)という女の子に起因する。
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