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「受け取ってくれ」
そう言って彼女が差し出したのは、ハートのシールで封をされた白い封筒。僕はそれを無言で受け取る。
「何ですか? これ」
わざわざ封筒に入れるくらいだ、教えてもらえないだろうと思っていたが、場を繋ぐ為にあえて聞いた。
「私の携帯番号とメールアドレス、それとデートのお誘いの手紙だ」
見事に予想は覆された。言ってしまったら、わざわざこうやって渡した意味はないと思うんだけど……。
それを言うと良子さんはハッとして、自分の失態に気付いた。
「いや……すまない。時たまこういう凡ミスをしてしまうのだ」
照れたように頬をかく彼女。軽く頬を赤に染めたその様は実年齢よりも幼く見えて、何故か保護欲が掻き立てられた。……僕が言うと説得力がかけちゃうんだよねー。
「でも、家に拉致ってまで渡さなくても、学校で渡してくれたら良かったじゃないですか」
公衆の面前で少々恥ずかしい思いをさせられたのだから、怒っていますよってアピールの為に、ブーたれてみる。
「ははっ、可愛いな紫くんは。私はこう見えても極度の恥ずかしがりやなんだ」
「突然僕を抱き上げて、あまつさえお姫様抱っこのまま家へ全力疾走した人の言うことじゃないです」
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