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「わ、わかった! わかったから、その……」
なんですか、と僕は首を傾げてみる。
「顔が、近い」
尻すぼみの言葉を聞いてハッとする。目しか見てなかったから、距離のことを忘れてた。
「すみません」
謝罪と一緒にそそくさと離れる。良子さんは赤面しながら、顔をうつむかせていた。
「と、とりあえず! ああ言えば、先輩に変な注目はいきませんから」
普通に過ごしてるだけで注目の的ですけど、とは空気を読める僕は言わない。
「よし! ありがとう。もう大丈夫だ」
そう言った良子さんの表情は、いつものような元気いっぱいの笑顔だった。
なんだかよく分からない変な空気はそれで吹き飛ばされ、僕達はだらだらとした雑談に入った。途中渡された手紙を見ようとしたが、頼むから止めてくれと懇願され渋々諦めたのは余談。
しばらくすると良い頃合いになったので、僕は良子さん宅を出た。帰り際荷物の事を聞くと、なんともう僕の自宅の方へ届いているらしかった。先に僕の方へ向かわしてくれたんだとか。
しかし、僕の自宅はどうやって調べたのか。一応僕も学校の有名人ではあるし、そんな個人情報も結構漏れているだろう。
個人情報保護法なんてのは有って無いような物だと再認識出来ました。
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