前編

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   ***  手紙という物を久しく書いていないので、どう書けば良いのかよく分からない。という訳で、いきなり本題に入らせてもらう。  私、眞銅良子は粟井紫、君とデートを所望する。この言い方は堅苦しいか。君とデートがしたい。うん、これだ。  今私の下に、偶然にも、あくまで偶然にも映画のチケットが二枚ある。『ワンコとニャンコの大冒険』という、題名からは想像もつかないようなアクション映画だ。面白いらしいのだが……一緒に行ってくれないだろうか?  時間は明後日、日曜の午後二時からになっている。  行っても良いと思ってくれたなら、同封してある携帯番号又はアドレスに返事をしてくれ。  それでは、また。    ***  ベッドに寝ころびながら、僕は目の前で長方形のメモ用紙をヒラヒラさせる。手紙を読み終えてから暫くこうしているんだけど……さて、どうしよう。  幸いにも日曜は空いてるし、デートも嫌ではない。むしろ喜んでと言いたいところだけど……。  ああもう! ウジウジ考えてたって仕方ないじゃないか。条件は揃ってる。だったら答えは一つだ。  僕は紙に書かれている番号を入力し、電話をかけた。
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