1人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
俺は泥玉を喰らいながら、鎧男の元へと駆け寄った。
「助けてくれ、鎧のおっさん。俺の話を聞いてくれ!」
「ふん、何か困っておるようだな。ふん、いいだろう。俺に言うがいい」
「信じらんない話だろうけど―― 」
俺は今日起こった出来事を詳細に渡って説明した。鎧男は両手を腰に構えて、ふんふん言いながらそれを聞いている。
「 ――というわけなんだけどさ、何か知ってる事があったら教えてくれない? おっさんなら少しは… 」
「ふん、ありえん」
俺の言葉を遮っておっさんは一言呟いた。
「えーっと、今何て… 」
「ありえないと言っておるのだ。そんな現実離れした事が起こるわけないだろう」
現実離れした人間にそんなこと言われるなんて心外だ。
「でも、この世界には魔法があるだろ。なんか、転移魔法? …的なものを使われたんじゃないの?」
「ふん、そんな魔法は存在しない!」
「でも実際に俺はこうして… 」
「ふん、黙れい! そんな話は聞いたこともないぞ。それとも、俺を怒らせたいのか?」
「信じてくれって。お願いだから信じてくれよ!」
「分かった分かった。そんなに俺と戦いたいのか。ふん、いいだろう」
彼はゆっくりとした動作で剣を構えて、完全にやる気満々だ。俺はジリジリと後退するが、既に退路は塞がれていた。後ろからルファが叫び出す。
「今日は逃がさないぜ、ノート!」
反対側からは鎧男の声。
「ふん、どうした。来ないのなら俺から行くぞ!」
「ちょ、待って。待って嫌だ止め… ぎゃああああああああ!!」
薄れゆく意識の中で俺は思ったよ。何故この世界の人間は皆、人の話を聞かないのかと――
最初のコメントを投稿しよう!