『盗む』

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 僕も妹が生まれたときはとても嬉しかったんだ。  妹は小さくて、可愛くて、僕が守ってあげなきゃ、って思うほどに弱々しかった。  でも、妹が大きくなる度に僕は両親を盗られた気分になっていった。  それどころか、祖父母も僕より妹を可愛がった。  僕は、独りぼっちになっていく気がして、この原因の妹の人形を奪ってみた。  火がついたように泣き出す妹。僕の手には妹の人形。飛んできた母さんはその状況を見て僕の頬を思いっきりひっぱたいた。  徐々に、ヒリヒリとした痛みが頬に広がりジンワリと涙が滲む。 「お兄ちゃんが妹泣かしちゃダメでしょ!」  妹をあやしながら母さんはそう言った。  何で盗られた僕が怒られなきゃいけないの?  悪いのは、妹じゃないか。  こんなことになるなら妹なんていらなかった。  憎くて、悔しくて、寂しくて、涙がこぼれる。  妹なんて……いらなかった。
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