序章

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──目を覚ましたら、緑色の雨 が降っていた。 「何、コレ…雨…?」 緑色で冷たくなくて、不思議な 雨が打ちつけている。 何かおかしい、しかもこんな場 所知らないし。 というか、俺は何でここに…? …俺?俺の名前って何だっけ。 「何してんだよ、早く帰るぞ」 「えっ…?」 誰? 知らない男の人が俺の頭上にカ サを差して、近くの家の中へと 手を引かれる。 「えっ、ちょっと…あの!」 「……?」 めんどくさそうに振り向くその 男の人は澄んだ目をしていて、 どこかクールなイメージを持つ 人だった。 カサはその人に合わないような ポップな柄で黄緑色。 「……あの、誰ですか?」 俺がそう言うと、男の人は動き を止めて固まる。…え、やっぱ り知ってる人なのかな。どこか で会ったことあったっけ? 頭を捻らせていると、頬に男の人の両手が触れていた。 …顔が近い。 「……分からないのか?」 その目はとても悲しみに溢れて いるのが、俺でさえ分かった。 …だけど、射抜くような視線に 俺は何も答えられなかった。  
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