蛆虫

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蛆虫‥いや、明らかに人知外の、この奇怪な虫。 その人知外の脅威は、その頃O町の各所で同様の、痕跡の無い痛みだけの現象を引き起こしていた。 通勤帰りのサラリーマンが、帰宅途中の中学生が、はたまた夕涼みの散歩中の老人や、風呂上がりの幼児までが、この謂れも痕跡も無い不思議な痛みに顏をしかめ、泣き叫び、中には昏倒する者も出た。 しかし、この時はまだ誰しもこの虫刺されが、この後続く終わりの無い悪夢の序曲だとは、気付いていなかったのだ。
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