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パトカー三台と、鑑識科の面々を乗せたワゴン車が駅裏の機関庫に乗り入れられると、既に到着していた救急隊員の内二名が、慌て駆け寄って来た。
「どうも、ご苦労様です!」
若い救急隊員が大声で挨拶するが、張り詰めた声の中には、隠せない動揺と怯えのような物が混ざっている。
ワゴン車から降りた鑑識科の面々は、長の指示に従い迅速かつ的確に作業をこなしていく。
「O町警察の神保です!ご苦労様です!」
救急隊員にも負けない大声で、若い刑事が敬礼までつけて挨拶する。身長は、170㎝くらいであまり大きくはないが、かなり大きめな目と分厚い唇が印象的な、誰が見ても一目で分かる好男子である。
「神保ぉ、朝っぱらから何をそねぇに張り切っちょるんかぁ?」
別のパトカーから面倒くさそうに降りながら、三十台後半くらいの刑事が声をかける。
救急隊員が挨拶しようとするのを、手で遮りながらあくびをすると、「えーと、O町警察の村崎です」と、これまた面倒くさそうに挨拶を済ませた。
察するに神保の上司であろう村崎は、機関庫の傍らに縦に並んだ犠牲者に歩み寄ると、しゃがみこんですぐに観察を始めた。
「ちょい、村さん!まだ触れんで!」
白い手袋をはめ、犠牲者に触ろうとする村崎に、鑑識科の長であろう小太りの男が声をかける。
「おお、岡本っちゃん、それかぁ?悪い悪い!」
村崎に声をかけた岡本と呼ばれる鑑識科の男は、隣にしゃがむと少し眉間にしわを寄せながら、まわりに聞こえないように耳打ちしてきた。
「これ、どねぇ思う?村さん」
村崎は、腕組みをしながら答える。
「う~ん、長いこと色んな仏さん見ちょるが、こねぇなんは初めてじゃのう」
いつの間にか村崎を挟む形で傍にしゃがんだ神保は、眉をひそめて犠牲者を凝視していたが、村崎に目で促されて数人の警官と共に、近辺の聞き込みに出て行った。
小走りで出ていく神保の背中を見ながら、岡本が呟くように言う。
「体の殆んどが、炭化しちょる‥よほどの高温で、よほど急速に焼かれんと、こねぇはならん」
「火炎放射機でも、持っちょる奴がおるんじゃろうか?」
この男の癖か、村崎は場に似つかわしくない、ひどくのんびりした口調で、またもあくびをしながら岡本に聞き返す。
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