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「私がこの島に到着して、半年の時を経た。
未だに、何の成果もない。
それどころか、新文明の形跡もみられない。」
彼の朗々とした声が空間に響きます。
『新文明の話は間違いがなく、なおかつ、この島に間違いはない。
となれば、捜索が甘いのだろうか?
いや、捜索隊のみんなも疲弊している。
手が抜かれているとは思えない。』
彼はページを数枚めくりました。
『何という偶然!
豪雨に見まわれ、走り回っているうちに、おかしな洞窟を見つけ、探ってみれば、中には今までみたことのない多くの古代言語や壁画があるではないか!
お誂え向きに、階段や用水路まである。
間違いない!新文明の拠点を発見したのだ!』
彼は再びページを捲ります。
『今日、捜索隊のひとりが殺害されていた。
とても、人の手によるものとは思えない。いや、人故にこのような残忍な殺し方なのだろうか?
どちらにせよ、このことは獣の仕業として片付けた。
いま、誰かに妨害されるわけに行かないのだ…』
私たちは黙って彼の話をききます。
『なんて事だ!
今日、半分の捜索隊が殺害されていた…
寄りによって、遺跡の中でだ。
何だというのだ…』
彼は一息つき続きを読みます。
『ここは開いてはならない聖域だったのだ。
知らなかったのだ!
あの封印を開いてはならなかったのだ!
どうすればいい!
もう、私を含め5人しかいなくなってしまった…
後少しで壁画の解読がすむというのに…』
彼は最後のページをめくろうとするが、なかなかめくりません。
「どうしたの?」
「何か張り付いて、めくれないんだよ。」
彼が端を慎重にはがし始めました。
「!」
「血…文字だよな?」
親友が固まっているどす黒い粉をさわって、確信を込めた頷きを私達に見せました。
「それより、中には?」
「お、おう。
読むぞ?」
彼は眉を寄せ、読み始める。
『其は襲う者也
……………頬の傷………………
………関わるべからず…………
其の形は火傷が如く
この世にあるまじき呪い也
知ってはいけない、
見てはいけない、
書いてはいけない、
言ってはいけない、
歌ってはいけない、
彫ってはいけない、
表現してはいけない。
されど、忘れてもいけない。
其は深き闇より出にけり。
光を嫌い、人の闇よりうまれし物。
其は闇より出りし、傀儡の呪い也。
其の呪いは抗えぬ力也。
其の力、人の意識を奪いしもの也。
けして、封をあけること無かれ。
感染者は死を持ち、呪いを完結せよ。』
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