其は深き闇より出にけり

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『例え、主が命を失うことになろうとも…』 彼はそこで切り、私達を見つめます。 「つまり、この呪いは殺人衝動を帯びて、他の人に感染をするのか…」 親友が彼に確認の意味で聞き返す。 「んじゃ、居合いの先生もこれが原因か?」 「だろうな。 傷が火傷のようとなれば、確実だ。 あの先生も頬に火傷があった。」 私達は、少し沈黙していました。 「ねぇ、外にでない?」 「そうだな。雨もやんだらしい。」 私たちは階段を上がり、外にでると暑い日差しを浴びました。 「それより、飯を食おう。 …あれは忘れよう。 今のところ、感染はしてないらしいし。」 「ああ、帰ることを最優先に考えよう。」 私達は食料を集め、食事の用意を始めます。 彼は器用にナイフで乾燥魚や鳥をさばいていきます。 「おい!あれ見ろ!!」 親友は彼の肩をたたき海岸を指差します。 「あ? あれは…」 「私たち以外の救難船!」 「俺が見てくる! あいつ等の分まで、飯作ってやってくれ!」 親友は駆け下りるように海岸縁に浮かんだオレンジ色の船に向かいます。 船には3人が相向かいに座っています。 「おい! どうしたんだ?降りて来いよ!」 親友が何度も声をかけても反応がありません。 親友は仕方なくすぐそばの岩場まで行きます。 「?」 親友はひとりの肩に手をおきました。 「…うわぁぁぁぁぁ!」 親友が叫び声をあげ、頭を抑えます。 救難船の人たちは内臓が抉られ、パサパサにミイラ化していました。 親友は頭を抱え、うずくまります。 「お~い?」 「おい!大丈夫か!」 私達はうずくまっている親友に近づきます。 親友は静かに顔を上げます。 「あ、あなた… その頬…」 親友の頬には間違いようのない火傷が刻まれていました。 「逃げろ!!」 彼は親友を突き飛ばし、私の手を引いて森に飛び込みます。 森の獣道をひたすらに走ります。 「はぁ…はぁ…」 「ふぅ…ふぅ… まだ…逃げないとなの?」 私は陸上部でしたから、体力に自信はありました。 しかし、獣道は勝手が違う上、30分も全力で走りつづけたせいで、体力は限界に来ていました。 「そうだな。少し休もう。」 私は近くの倒木に腰をかけ、息を整えます。 彼は腕で汗を拭い、あたりを見渡しています。といっても、辺りは木ばかりなので、とても全て見渡せる感じではありません。
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