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「…追ってきていない?」
彼が小さくつぶやきます。
「え?」
「いや、あの呪いが殺人衝動ならば、この島にいるのは、俺らだけ。
何としても、殺しにくるだろう?
それが、追ってきていない…」
彼は聞き耳をそばだてて、集中します。
「なにかくる!」
彼は辺りを警戒しながら、見回します。
私も急いで立ち上がり、逃げる準備をします。
ガサガサという、木の葉をかき分ける音が聞こえますが、一切姿が見えません。
「音がするのに…」
「葉っぱが降ってきてる…
上だ!」
彼は上から飛びかかってくる親友の姿を見るやいなや、私を突き飛ばしました。
彼も突き飛ばしと同時にその場を飛び退きます。
上からは見る影もない姿の親友が降ってきました。
手には尖った石を持っています。
「くそ!」
「オオォォォォォン!」
雄叫びをあげ、親友は走り出した彼を追いかけます。
私も急いで彼の後を追いました。
暗い森を抜け、拓けたところで私は彼が親友の首にナイフを突き立てているの所を見ました。
覆い被さるように倒れ込んでいる親友の喉元に、目を瞑り、顔を背けて彼はナイフを握った手を突き立てています。
「…うぅ…」
彼が手を横に振り、親友を退かすと、頭を抱え込みました。
「大丈夫?!」
「あぁ…一発殴られた…」
彼は立ち上がり親友を見下ろします。
「すまなかった…」
それから5時間ほどで捜索ヘリが私達を見つけてくれて、無事に帰路につくことができました。
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