其の形は火傷が如く

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ある暑い夏、私たちは、する事もなく、ただぼーっと夏休みを過ごしていました。 「暑い…」 彼はぼやくように扇風機に顔を近づけていいます。 「確かにあついね。」 私も連日の熱帯夜のせいでいい加減寝不足になっていました。 だからと言って、日中寝てしまえばよるが眠れないので、だらだらと暑い昼間を過ごしていました。 お昼過ぎでしたでしょうか? 彼の携帯が鳴ったのです。 彼はだるそうに携帯を取り出し、通話ボタンを押しました。 「あー、もしもし。」 『よう!元気か?』 聞こえてきたのは、私達の親友の声でした。 「声を聞いてわからんか?馬鹿者。」 『暇でだるいらしいな。』 「よくわかっているじゃないか。 ってことで、切るな。」 『ちょ、まった!』 親友は焦って、大声を出す。 「ん?」 『今日はおしゃべりで電話したんじゃないんだ。 おまえ等も一緒にハワイに行かないか?』 「ハワイ?」 親友が自慢げにしているのが電話越しに聞き取れました。 『懸賞に当たってさ。3人1組だからおまえ等を誘ってやろうと思ってなぁ。』 「家族とはいかないのか?」 『おとんもおかんも今仕事で出張中や。』 彼は軽く相づちを打つと私の意志を聞いてきました。 「どうする?」 「まだ、休みも長いわけだし、行こう。」 私は初めての海外だったので、正直、彼が渋ったとしても、説得して行きたかったのです。 今思えば、あの時に断るべきでした。
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