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「うわぁぁぁ!」
彼は叫び、後ずさりました。
するとかかとに何か異様な弾力の物を感じました。
彼はおそるおそる足元を見ると、そこには最早誰かわからない頭部が分断されて、落ちてしました。
「………っ!!」
声にならない声で彼は叫びました。
殺人鬼がいる!
彼の思考は、この一言でいっぱいでした。
兎にも角にも、彼は私達と合流をしなければ、と走り始めました。
「な……っ!!!」
彼が船内には行ったとき、鼻を突く生暖かくさびた鉄のような匂いが彼を包みます。
目には痛すぎる鮮血の赤。
見ることのないどす黒い色の肉片。
赤と灰色の混じったドロドロとした液体。
それらが廊下に飛び散り、まるで足の踏み場もないほどに、肉片が飛び散っています。
彼は船酔いとは違う吐き気を催し、我慢しきれずに、甲板から5メートルほど進んだ所で、嘔吐してしまいました。
「大丈夫?!」
たまたま、私達もこの現状を見て、彼を探していたのです。
「あ…?
お前ら……」
彼は呆けるような顔をしましたが、すぐに再び吐いてしまいます。
私は急いでせなかをさすってあげました。
「おい…。
あれ…。」
親友は甲板とは逆の方向、つまり船内の方向を指を指しながら、固まっています。
私達はそちらに目を向けると、つい最近、大食堂であった居合いの達人が、刀をぶら下げて、佇んでいます。
刀から血と内臓が垂れ下がっていました。
まさに耳元まで裂けるほどニッタリと笑い、こちらにかけてきました。
親友は私達を本能的に押し倒し、達人の居合いを避ける。
「きゃあ!」
「うぐ!」
彼は口に残った嘔吐感すら忘れるほどの恐怖を感じました。
「逃げろ!」
親友は私と彼の手を引いて逃げ出しました。
それをみて再び、居合いを繰り出してきます。
彼は手に持っていたライターを投げつけました。
火のついたライターをうけ、驚き剣撃を途中で止め、たじろぎました。
「今だ!」
親友は再び私達の手を引いて、外に飛び出しました。
閉じられた扉の向こうからはさらに叫び声が聞こえました。
間もなくして、操舵室からも絶叫が聞こえ、直ぐにガラスが朱で塗られました。
どれほど、私たちはそこでたたずんでいたかわかりません。
しかし、絶叫が聞こえなくなり、再び船内への扉が開かれました。ひとりでにです。
まるで私達を招くように…
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