10人が本棚に入れています
本棚に追加
甲板にでたとき、誰かがいました。
「誰だ!」
親友がナイフを取り出し、構えました。
ナイフはたまたま甲板に戻るときに、死んでいる人から拝借物でした。
「心配しなくても良い。
俺が操舵室に行くときに、集めておいた。」
「すいません。私達3人しか…」
「そうか…」
彼は残念そうな声を出して、うなだれました。
「大丈夫?」
「ああ。
それより、いつまでもここにいるのはやばい。
救難船で逃げよう。」
彼は私たちにてきぱきと指示を出し、救難船の用意を進めました。
「あ、危ない!」
彼によって集められた人の一人が叫び声をあげます。
彼は素早く後ろを振り向くと、殺人鬼が鞘を振り上げて、殴りかかってきたのです。
「逃げろ!」
彼は私を突き飛ばし、殺人鬼にタックルを加えました。
「ぐ…おおぉ!」
彼は腕の痛みに耐え、咆哮します。
そのまま、彼は殺人鬼を壁にたたきつけました。
たったそれだけで殺人鬼が動かなくなったのです。
「はぁ…はぁ…」
「大丈夫か!」
親友が彼に駆け寄り、腕を担ぎ上げました。
「なんで生きてるんだ…」
「あ、あの時は、確実に死んでいたんだ!」
親友は焦るように語尾を強くします。
それに対して、彼は静かに返しました。
「医者の息子のお前の言葉を疑ってるわけじゃない。
それに、横腹にでっかい穴があいて、生きてるとも思えない。」
彼は極めて冷静である、私はそう感じました。
「こいつは何なんだ…
ん?」
彼は殺人鬼に顔を近づけて、見ます。
「お、おい…」
「なあ、これどう思う?」
彼が殺人鬼の方を指さします。
「え?」
「いや。こいつ、腕がないんだよ。
変に火傷もしてるし。」
「本当だ。
これはただ切れた感じじゃないな。
それに頬にこれだけ大きな火傷なんて普通しないな。」
「だろう?
なんていうか…」
「引きちぎられた後だな。
しかも、尋常な力じゃない。骨が砕かれて、上腕の骨が残っている。」
「それに…なんだ?これ。」
彼は肉にめり込んだ金属片を抜きました。
「歯車…かな?」
私はやっと立ち上がり、二人の会話に加わりました。
「あぁ、それは、船のエンジンの歯車ですね。」
私達の会話に少しわかめの男の人が加わってきました。
「タービンの?」
「ええ、自分この船の調整士をしてるんですが、それは間違いなく、この船のエンジンに組み込まれている歯車ですよ。
でも…」
「でも?」
男の人は腕を組んで、首を傾げました。
「その歯車は奥にはめ込まれて、解体でもしないと表にでない物なんですよ。」
最初のコメントを投稿しよう!