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夏、クヌギの木が生い茂る境内にサンサンと太陽の光が射している。
「トラ吉~今日こそお前と決着付けてやるからなぁ! 負けた方が勝った方の家来になるんだよぉ!」
神社が作る日陰に寝ているにゃあの耳に、甲高い人間の男の声が突き刺さった。
また、あいつか――。
――どうも皆さんこんにちは、にゃあの名前はトラ吉。
この芝間稲荷神社を牛耳っている野良猫だ。
トラ吉ってのは別に自分で付けたわけじゃないが、近所の人間が呼ぶため仕方なく名乗っている。
こんな名前で何だが、にゃあはトラ柄じゃないぞ。
白く艶やかな毛並みの生え揃う純白のネコだ。
今、聞こえてきた男の名前はケンタ。
近所の小学生らしい。
なんでも、夏休みに入ったとかでこのところは毎日、ここに来てはにゃあを呼んでいる。
時の自由人であるにゃあにとって時間を束縛されるのは嫌だが、ファンサービスもしてやんないといけないからな。
べ、別に寂しいわけじゃにゃいぞ!
これは、魅力あるにゃあの宿命なんだ!
……いや、あのスイマセン。調子乗りました。
「あ、トラ吉いるんじゃん! なら、さっさと出て来いし~」
そんなことを考えていると神社の陰から、ひょっこりと男の子が出てくる。
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