第87戦目

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 夏、クヌギの木が生い茂る境内にサンサンと太陽の光が射している。 「トラ吉~今日こそお前と決着付けてやるからなぁ! 負けた方が勝った方の家来になるんだよぉ!」  神社が作る日陰に寝ているにゃあの耳に、甲高い人間の男の声が突き刺さった。  また、あいつか――。  ――どうも皆さんこんにちは、にゃあの名前はトラ吉。  この芝間稲荷神社を牛耳っている野良猫だ。  トラ吉ってのは別に自分で付けたわけじゃないが、近所の人間が呼ぶため仕方なく名乗っている。  こんな名前で何だが、にゃあはトラ柄じゃないぞ。  白く艶やかな毛並みの生え揃う純白のネコだ。  今、聞こえてきた男の名前はケンタ。  近所の小学生らしい。  なんでも、夏休みに入ったとかでこのところは毎日、ここに来てはにゃあを呼んでいる。  時の自由人であるにゃあにとって時間を束縛されるのは嫌だが、ファンサービスもしてやんないといけないからな。  べ、別に寂しいわけじゃにゃいぞ!  これは、魅力あるにゃあの宿命なんだ!  ……いや、あのスイマセン。調子乗りました。 「あ、トラ吉いるんじゃん! なら、さっさと出て来いし~」  そんなことを考えていると神社の陰から、ひょっこりと男の子が出てくる。
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