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俺は、ちょうど目に留まった本を手に取った。 暇つぶしのときの本は、いつも適当に選ぶ。 どの本でもいいし、読みきるつもりもない。本当に暇つぶしだから。 これは時間を無駄にしているとは思わない。 余裕がないよりはマシだと思う。 しばらく経つと、隣のおじさんが腕時計を見る素振りをして、雑誌を戻しコンビニを出ていった。 俺もそろそろ行こうと、本を元の位置に戻ったとき、 「あのっ」 いきなり声をかけられた。 振り向くと、女の人が俺を見ている。 店員の「いらっしゃいませ」は聞こえなかったし、たぶん俺がコンビニに入ってきたときから、お客としていたのだろう。 この人は背が低いし、存在に気付かなくても無理はない。
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